誰かの好きを食べている vol.4 -三日月 新宿-

新宿が苦手だ。

いつ訪ねても人、人、人。
不規則に散らばり、収縮する人混みを掻き分けて歩くのは一年たった今でも慣れないし、
家に帰ると必ず敗走した気分になる。(拭えない田舎者感)

謎の敗北感を背負って帰路につくというのが、
上京当初から今日までの自分と新宿の関係だ。

しかし、先日その敗北感がちょっと拭えた。
三日月に行った後の帰り道からだ。

三日月は、キャッチの視線がギラつき飛び交う歌舞伎町の中心を
一歩抜けた裏路地に佇んでいる。

過剰に装飾されたホスト街とは対照的に、
暖簾を灯すためのものと店内の光だけが暗い路地にそっとあるのみで、
初見であの引き戸を開ける勇気は今の自分にはない。
(事前に調べていても3秒くらいは躊躇いがあった。)

暗い路地を勇気を持って突き進むと現れる「三日月」の文字



そんな一抹の不安も即座に杞憂に終わるくらい、
お店の方のやさしさと、美味しいご飯、お酒が心身を共に温めてくれた。

ここでの食体験は何もかもが、ほころび弛緩する。

出汁が沁みるということを表現としてではなく
身体に入ってくるような感覚として味わったし、薬味が食材の風味を変えて、
食欲を刺激することも身をもって教えてくれた。

冬のお通しはホクホクのジャガイモ。キンキンの麒麟瓶とともに。
カキフライに湯豆腐に刺身の盛り合わせ…どれを頼んでも旨い…
三日月で1番好きなのは湯豆腐です



寒さと緊張で直前まで硬直していた筋肉たちはあっという間に弛んでいる。

これがおもてなしというものか…と感心しながらも、
手は間髪あけずに口にものを運んでいた。

最後には季節のフルーツがいただける。こういうところも粋だよな〜

店を後にした帰路。
いつもの疲労感はそこになくて、足取りも軽かった。

これからもきっと新宿と僕の関係はさして変わらないと思う。

それでも、苦手だった新宿をもっと知りたいと思っている自分がいる。
ご馳走様でした。

<お店の詳細>
三日月
営業時間(変更有):17:00~23:00
定休日:日曜日
支払い方法:現金
住所:東京都新宿区歌舞伎町1丁目3−10
アクセス:
新宿三丁目駅から徒歩5分程度
新宿駅から徒歩10分程度

メニューは張り紙から選ぶスタイル。この悩む時間がたまらなく好き。
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